家庭菜園で最も人気があり、同時に最も連作障害に悩まされるのがナス科です。
トマト、ミニトマト、ナス、ピーマン、シシトウ、ジャガイモ——これらはすべてナス科で、去年トマトを植えた場所に今年ナスを植えれば連作にあたります。見た目も味も違うので油断しがちですが、土壌病原菌にとっては同じ宿主です。
この記事では、ナス科で何が起きているのか、野菜ごとにどれだけ年数をあけるべきかを整理します。
ナス科の主な野菜
| 野菜 | あける年数の目安 |
|---|---|
| トマト・ミニトマト | 4〜5年 |
| ナス | 4〜5年 |
| ピーマン | 4〜5年 |
| シシトウ | 3〜4年 |
| ジャガイモ | 2〜3年 |
同じ科なのに年数が違うのは、罹る病気が違うからです。次で説明します。
ナス科を襲う3つの病気
青枯病(あおがれびょう)
ナス科の連作障害で最も恐れられている病気です。細菌(ラルストニア・ソラナケアラム)が根から侵入し、導管を塞いで水の通り道を断ちます。
特徴的なのは症状の出方です。葉が緑色のまま、日中に急にしおれ、夕方には回復する。これを数日繰り返した後、回復しなくなって株全体が枯れます。「青いまま枯れる」から青枯病です。
一度発生すると細菌が土に長期間残り、薬剤での防除も難しいため、発生した区画ではナス科を数年以上あけるのが原則になります。高温多湿を好むため、梅雨明け後の高温期に多発します。
半身萎凋病(はんしんいちょうびょう)
カビ(糸状菌)による病気です。株の片側だけ、あるいは葉の左右どちらか半分だけが黄化してしおれるという独特の症状が名前の由来です。
青枯病より進行はゆるやかですが、こちらも土壌中に長く残ります。ナスとトマトで問題になります。
そうか病(ジャガイモ)
ジャガイモに特有の病気で、イモの表面にかさぶた状のざらついた病斑ができます。放線菌が原因です。
食べられないわけではありませんが商品価値・見た目が落ちます。そうか病菌はアルカリ性土壌で活発になるという、他の病気と逆の性質を持ちます。このためジャガイモを植える区画には石灰を入れないのが定石です。
そうか病は青枯病ほど長く土に残らないため、ジャガイモの輪作年限はトマト・ナスより短い2〜3年とされています。
ジャガイモを「軽い」と考えてはいけない理由
ジャガイモ自身の輪作年限は2〜3年と短めですが、注意点があります。
ジャガイモの後にトマト・ナス・ピーマンを植えるのは避けるべきです。ジャガイモはナス科である以上、青枯病菌や半身萎凋病菌の宿主になり得ます。ジャガイモ自体は目立った症状を出さずに収穫できても、土の中では菌が増えていることがあるのです。
あける年数は「これから植える野菜」の側で判断する——これがナス科を扱ううえで最も重要なルールです。ジャガイモの後にトマトを植えるなら、トマトの基準(4〜5年)で判断します。
資料によって年数が違う理由
ナス科の輪作年限は、資料によって3〜4年から6〜7年までかなり幅があります。
- 病害が出ていない畑なら3〜4年で十分とする見方
- 青枯病・半身萎凋病が出た畑では5〜6年以上を求める見方
どちらも間違いではなく、前提としている畑の状態が違うのです。
当サイトでは資料間で値が割れる場合、保守的な(長い)方を採用しています。トマト・ナス・ピーマンを4〜5年としているのはそのためです。短く見積もって失敗すると回復に何年もかかるので、家庭菜園では安全側に倒す方が合理的だと考えています。
すでに青枯病が出た区画なら、4〜5年でも足りない可能性があります。その場合は太陽熱消毒でのリセットを検討してください。
接ぎ木苗の効果と限界
トマト・ナスには、病気に強い台木に接いだ接ぎ木苗が広く流通しています。実生苗より高価(1株あたり2〜3倍程度)ですが、青枯病や半身萎凋病への抵抗力が上がります。
ただし過信は禁物です。
- 台木が抵抗性を持つのは特定の病気に対してだけ。すべての土壌病害を防げるわけではない
- 抵抗性は「絶対に発病しない」ではなく「発病しにくい」。菌の密度が高ければ発病する
- 線虫害や生理障害には効かない
- 接ぎ木部分が土に埋まると、そこから穂木が発根して台木の意味がなくなる(接ぎ木部を土に埋めないのが鉄則)
結論として、接ぎ木苗を使っても輪作は続けるべきです。接ぎ木苗は輪作年限を短縮する免罪符ではなく、リスクを下げる保険と考えてください。
ナス科の後に何を植えるか
ナス科の後作として特に相性がよいとされるのが、次のグループです。
ネギ類(ネギ・玉ねぎ・ニラ)——ネギ類の根の周りにいる細菌が、青枯病菌や萎凋病菌の密度を下げる働きを持つことが知られています。ナス科の後作としては理にかなった選択です。
マメ科(エンドウ・ソラマメ)——トマトやナスは肥料を大量に吸うため、収穫後の土は窒素が減っています。マメ科の根粒菌が空気中の窒素を固定して地力を回復させます。
アブラナ科(キャベツ・ブロッコリー・大根・カブ)——ナス科と共通の病害が少なく、後作に良いとされます。
一方、トマトの後のキュウリは相性が悪いとされます。科が違っても後作に向かない組み合わせがある例です。
野菜ごとの具体的な相性は個別ページにまとめています。
まとめ
- ナス科はトマト・ミニトマト・ナス・ピーマン・シシトウ・ジャガイモ。互いに連作になる
- 主な病害は青枯病・半身萎凋病(トマト・ナス)とそうか病(ジャガイモ)
- 輪作年限は野菜ごとに違う。トマト・ナス・ピーマンは4〜5年、ジャガイモは2〜3年
- あける年数はこれから植える野菜の側で判断する
- 接ぎ木苗は保険であって、輪作の代わりにはならない
- 後作にはネギ類・マメ科・アブラナ科が相性がよい
前作から次に植える野菜を選ぶときは、連作障害チェックツールをお使いください。44種の野菜について、輪作年限と科をまたぐ相性の例外をまとめて判定します。