「土づくりにはまず石灰」とよく言われますが、ホームセンターに行くと苦土石灰・有機石灰・消石灰と何種類も並んでいて、どれを買えばいいのか迷います。
しかも石灰は入れすぎると害になる資材であり、入れてはいけない野菜もあります。この記事では家庭菜園での使い分けを整理します。
そもそも石灰を入れる理由
石灰をまく目的は主に2つです。
1. 土の酸性を中和する
日本は雨が多く、雨が土中のカルシウムやマグネシウムを流し去るため、土は放っておくと酸性に傾きます。多くの野菜が好むのはpH6.0〜6.5(弱酸性)で、これより酸性が強いと根の張りが悪くなり、養分も吸えなくなります。
2. カルシウムを補給する
カルシウムは植物にとって必須の栄養素です。不足するとトマトの尻腐れ、白菜の芯腐れなどが起こります。
4種類の石灰資材
| 種類 | 主成分 | アルカリ分 | 効きの速さ | 植え付けまで |
|---|---|---|---|---|
| 苦土石灰 | 炭酸カルシウム+炭酸マグネシウム | 約53% | ゆるやか | 1〜2週間 |
| 有機石灰 | 貝殻・卵殻由来の炭酸カルシウム | 約35〜50% | 非常にゆるやか | すぐ可 |
| 消石灰 | 水酸化カルシウム | 約60〜70% | 速い | 2週間以上 |
| 生石灰 | 酸化カルシウム | 約80% | 非常に速い | 2週間以上 |
苦土石灰(家庭菜園の標準)
「苦土」=マグネシウムのことです。カルシウムとマグネシウムを同時に補給できるのが最大の特徴です。
マグネシウムは葉緑素の中心元素で、不足すると下葉から黄色くなるマグネシウム欠乏が出ます。日本の畑では不足しがちなので、これを一緒に補えるのは大きな利点です。
反応がゆるやかで扱いやすく、迷ったら苦土石灰で問題ありません。ただし土に混ぜてから1〜2週間おいてから植え付けます。
有機石灰(急ぐとき・初心者向け)
カキ殻、ホタテ貝殻、卵殻などを原料とした天然由来の資材です。
最大の利点は、まいてすぐに植え付けられること。 アルカリ分がおだやかで、効きがゆっくりなので、急激なpH変化で根を傷める心配がありません。入れすぎによる失敗が起きにくいのも安心材料です。
さらに、堆肥や有機肥料と同時に入れても問題ないという利点があります(後述する消石灰との違い)。
欠点は効果がゆるやかで、価格がやや高めなこと。「土づくりの時間が取れない」「石灰の量加減に自信がない」という場合はこちらが向いています。
消石灰(広い面積・強い酸性土壌向け)
アルカリ分が高く、少ない量でしっかりpHを上げられます。安価なので広い面積を扱うときに向きます。
ただし家庭菜園ではあまりお勧めしません。
- 粉が飛びやすく、目や皮膚に入ると危険(強アルカリ)。防塵マスクとゴーグル、手袋が必要
- 反応が強く、入れすぎるとpHが上がりすぎる
- 窒素肥料や未熟な堆肥と同時に使うとアンモニアガスが発生し、窒素が失われるうえ根を傷める
生石灰
最もアルカリ分が高く、水と反応して高温を発する危険な資材です。家庭菜園で使う場面はほぼありません。
施用量の目安
pHを1上げるのに、1㎡あたり100〜200g(苦土石灰の場合)が一般的な目安です。有機石灰なら100〜300g程度。
ただしこの数字は土質によって大きく変わります。砂質土は少なくて済み、粘土質や腐植の多い土は多く必要です(緩衝能が高いため)。
最も重要なこと:測ってから入れる
pH測定キットを使ってください。 数百円から手に入ります。測らずに「毎年なんとなく」入れ続けるのが、家庭菜園で最も多い失敗パターンです。
石灰を入れすぎるとどうなるか:
- pHが上がりすぎ、鉄・マンガン・ホウ素・亜鉛といった微量要素が吸収できなくなる
- 葉が黄化する、生育が止まるなどの生理障害が出る
- 一度上げたpHを下げるのは非常に難しい
「土づくり=とりあえず石灰」という習慣は見直した方がよい、というのが実際のところです。
まくタイミング
苦土石灰・消石灰は植え付けの1〜2週間前に土によく混ぜ込みます。
順番としては次のようになります。
- 石灰をまいて耕す
- 1〜2週間おく
- 堆肥・元肥を入れて耕す
- さらに1週間ほどおいてから植え付け
石灰と肥料(特に窒素)を同時に入れないことが要点です。同時に入れるとアンモニアガスが発生し、窒素分が無駄になります。
有機石灰はこの制約がなく、堆肥と同時に入れてもすぐ植え付けても構いません。
石灰を入れてはいけない野菜・区画
ジャガイモ
ジャガイモの区画には石灰を入れません。
ジャガイモのそうか病は、他の多くの病気と逆にアルカリ性土壌で活発になります。石灰でpHを上げると、イモの表面がかさぶた状にざらつくそうか病を招きます。
ジャガイモはpH5.0〜6.0のやや酸性を好みます。前作で石灰を入れた区画にジャガイモを植えるのも避けた方が無難です。
サツマイモ・ブルーベリーなど酸性を好む作物
サツマイモも酸性寄りの土を好み、石灰は基本的に不要です。
逆に石灰が効く:アブラナ科の根こぶ病対策
アブラナ科の根こぶ病は酸性土壌で多発し、pH7.2以上ではほとんど発生しないとされています。根こぶ病が出た区画では、石灰でpHを上げるのが有効な対策になります。
つまり、根こぶ病対策(pHを上げる)とそうか病対策(pHを上げない)は真逆です。区画ごとに何を植えるか決めてから石灰の要否を判断してください。詳細はアブラナ科の根こぶ病|発生条件とpH管理にまとめています。
まとめ
- 迷ったら苦土石灰。マグネシウムも同時に補える
- 急ぐとき・量加減に自信がないときは有機石灰。すぐ植え付けでき、堆肥と同時でもよい
- 消石灰・生石灰は家庭菜園では扱いにくい
- 施用量はpHを1上げるのに1㎡あたり100〜200gが目安。ただし必ず測ってから
- 石灰と窒素肥料を同時に入れない(有機石灰は例外)
- ジャガイモの区画には石灰を入れない(そうか病が悪化)
- アブラナ科の根こぶ病にはpHを上げるのが有効
輪作の計画と合わせて、連作障害チェックツールで前作との相性も確認してみてください。