コンパニオンプランツの一覧を眺めていると、ネギとニラの登場回数が突出して多いことに気づきます。トマト、ナス、ピーマン、キュウリ、カボチャ、スイカ、イチゴ、白菜、ほうれん草——ほとんどの主要野菜に「相手役」として顔を出します。
「万能選手」と呼ばれる所以ですが、なぜそこまで効くのでしょうか。そして例外はないのでしょうか。
この記事では、そのしくみと正しい使い方を整理します。
効いているのは香りではなく「根の微生物」
ネギ類の効果を「香りが虫を遠ざけるから」と説明されることがありますが、本質はそこではありません。
ネギ・ニラの根のまわり(根圏)には、拮抗菌と呼ばれる微生物が共生しています。この拮抗菌が抗生物質に似た物質を出し、土壌中の病原菌の密度を下げる——これがネギ類の最大の武器です。
香りによる害虫忌避は副次的な効果で、主役は地面の下で起きている微生物どうしの競争なのです。
抑えられる病気
拮抗菌が効くとされるのは、家庭菜園で最も厄介な土壌病害ばかりです。
| 病気 | 主な被害作物 | 症状 |
|---|---|---|
| 青枯病 | トマト・ナス・ピーマン | 葉が緑のまま日中しおれ、やがて枯死 |
| 半身萎凋病 | ナス・トマト | 株の片側だけが黄化してしおれる |
| 萎凋病 | トマトなど | 導管が侵され萎れる |
| つる割病 | キュウリ・スイカ・メロン | 日中に萎れ、株元の茎が裂ける |
これらはいずれも一度出ると土に長く残り、薬剤での防除も難しい病気です。輪作年限が長く設定されている理由でもあります。
つまりネギ類の混植は、連作障害の中で最も対処が難しい部分に効くということになります。
相性の良い組み合わせ
| 組み合わせ | 効果 |
|---|---|
| トマト・ミニトマト × ニラ/ネギ | 青枯病・萎凋病を抑える |
| ナス × ニラ/ネギ | 青枯病・半身萎凋病を抑える |
| ピーマン・シシトウ × ニラ/ネギ | 土壌病害を抑える |
| キュウリ・カボチャ・スイカ・メロン × ネギ | つる割病を抑える |
| イチゴ × ニンニク/ネギ | 抗菌作用で病気を抑え、収量が上がるとされる |
| 小松菜・水菜・チンゲンサイ × ニラ | ダイコンハムシを遠ざける(こちらは香りの効果) |
| ほうれん草 × 葉ネギ | 病原菌を抑え、硝酸濃度を下げるとされる |
| カブ × 葉ネギ | 病害虫を抑え、甘みが増すとされる |
ナス科とウリ科——連作障害で最も苦労する2つの科に効くのが、実用上の価値です。
植え方のコツ:根を絡ませる
ここが最も重要な実践ポイントです。
拮抗菌の効果は、根が触れ合うほど近くないと届きません。 畝の端にネギを植えても、トマトの根圏には作用しません。
正しいやり方はこうです。
- トマトやナスの植え穴を掘る
- 苗を入れる前に、ネギまたはニラの苗を2〜3本、植え穴に一緒に入れる
- 苗の根とネギの根が絡み合うように配置して埋め戻す
「同じ穴に植える」という感覚です。離して植えるくらいなら、やらないのと大差ありません。
ニラは植えっぱなしにできるので、一度植えれば数年その場所で機能し続けます。ナスやトマトの株元にニラを常設しておく、という運用も可能です。
唯一にして重大な弱点:マメ科
ネギ類には、はっきりした禁忌が1つあります。
ネギ・玉ねぎ・ニラ × マメ科(エダマメ・インゲン・エンドウ・ソラマメ・落花生)は避けてください。
理由は、ネギ類の武器そのものにあります。
マメ科の根には根粒菌が共生し、空気中の窒素を固定してマメ科に供給しています。ところがネギ類の根圏の抗菌性微生物は、病原菌だけでなくこの根粒菌の働きまで妨げてしまうのです。
根粒がうまく着かないマメ科は窒素固定の恩恵を受けられず、生育不良になります。
ネギ類が優秀な理由と、マメ科に有害な理由は完全に同じ性質です。 「土の中の菌を抑える」という一つの働きが、相手によって薬にも毒にもなる——これがネギ類の本質だと理解しておけば、迷うことはありません。
なおこれは混植だけでなく後作でも同じです。玉ねぎを収穫した跡地にエダマメを植えるのも避けるべきとされています。詳しくはマメ科の連作障害をご覧ください。
後作でも使える
ネギ類の価値は混植だけにとどまりません。前作としても後作としても優秀です。
- ナス科の後にネギ類を植える → 残った青枯病菌・萎凋病菌の密度を下げる
- ウリ科の後にネギ類を植える → つる割病菌の密度を下げる
輪作を組むとき、ナス科やウリ科の次にネギ類を入れておくと、土のリセットを兼ねられます。輪作の組み方で4区画ローテーションを組む際、ネギ類の置き場所を意識してみてください。
ネギ類自身の輪作年限が短い(ネギ・ニラは1〜2年、玉ねぎ・ニンニクは1年)のも扱いやすい点です。輪作計画の調整弁として使えます。
過信は禁物
効果が確かな部類とはいえ、限界もあります。
- 菌密度が高ければ効かない。 すでに青枯病が多発している畑では、ネギを添えた程度では抑えきれません
- 輪作の代わりにはならない。 混植していても、同じ科を連作すれば菌は増え続けます
- 生理障害や線虫には効かない。 養分の偏りや土の物理性悪化は別の問題です。線虫にはマリーゴールドなどの緑肥が向きます
- すでに発病した株は救えない。 予防的な手段です
すでに病害が出てしまった区画は、太陽熱消毒でリセットするか、接ぎ木苗との併用を検討してください。
まとめ
- ネギ・ニラが効くのは香りではなく根圏の拮抗菌が土壌病原菌を抑えるため
- 青枯病・半身萎凋病・つる割病という、最も対処が難しい病気に効く
- 根が触れ合うほど近くに植える。植え穴に一緒に入れて根を絡ませる
- 唯一の禁忌はマメ科。根粒菌の働きまで妨げてしまう
- 良い理由と悪い理由は同じ性質の裏表
- 後作としても優秀。輪作年限も短く調整弁になる
- 万能ではない。輪作の代わりにはならず、発病株は救えない
組み合わせをまとめて確認するならコンパニオンプランツ相性チェック、避けるべき組み合わせは相性が悪い組み合わせ一覧をご覧ください。