接ぎ木苗は連作障害に効くのか|効果と限界

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ホームセンターの苗売り場で、同じトマトなのに価格が2〜3倍違う苗が並んでいることがあります。高い方が接ぎ木苗です。

「接ぎ木苗なら連作障害を気にしなくていい」と言われることがありますが、これは正確ではありません。この記事では接ぎ木苗が何をしてくれて、何をしてくれないのかを整理します。

接ぎ木苗とは

台木(だいぎ)と穂木(ほぎ)という2本の植物をつないで1本にした苗です。

根は台木のもの、実は穂木のもの。つまり「病気に強い根」と「おいしい実」のいいとこ取りをした苗です。

主な組み合わせは次のとおりです。

野菜 主な台木 主な狙い
トマト 病害抵抗性トマト台木 青枯病・萎凋病
ナス トルバム・赤ナスなど 青枯病・半身萎凋病・ネコブセンチュウ
キュウリ カボチャ つる割病
スイカ カボチャ・ユウガオ つる割病

接ぎ木苗が防げること

土壌病害への抵抗力が上がる——これが最大の効果です。台木は特定の土壌病原菌に対する抵抗性を持つように育種されているため、菌が土にいても発病しにくくなります。

根が丈夫になる——台木は根の張りや吸水力が強い品種が選ばれるため、生育が旺盛になり、乾燥や低温への耐性が上がることもあります。

ナスの台木トルバムは線虫にも効く——ナスの台木として使われるトルバムビガーは、ネコブセンチュウへの抵抗性も持っています。台木によっては線虫対策にもなります。

接ぎ木苗が防げないこと

ここが本題です。接ぎ木苗には明確な限界があります。

1. 抵抗性は特定の病気に対してだけ

台木が持つ抵抗性は、育種の際に狙った病気に対するものです。「土の病気全般に強い」わけではありません。

たとえばキュウリのカボチャ台木はつる割病に強いですが、つる枯病(別の菌による病気)には効きません。

2. 「絶対に発病しない」ではない

抵抗性は「発病しにくい」であって「発病しない」ではありません。土壌中の菌密度が高ければ、接ぎ木苗でも発病します。

連作を繰り返して菌を増やし続ければ、いずれ抵抗性を上回ります。

3. 生理障害には効かない

連作障害には土壌病害・線虫害のほかに生理障害(養分バランスの偏り、微量要素欠乏、土の物理性悪化)があります。台木を変えても土そのものは変わらないので、これらには効きません。

4. 使い方を誤ると効果がゼロになる

後述しますが、接ぎ木部分を土に埋めると台木の意味がなくなります

使い方の注意点

接ぎ木部分を絶対に土に埋めない

これが最も多い失敗です。

茎の途中にある接ぎ木部(つなぎ目、テープや接ぎ木クリップの跡が残っている部分)が土に触れると、穂木から根が出て土に直接入ってしまいます。こうなると土壌病原菌が穂木の根から侵入し放題になり、高いお金を払った意味が消えます。

トマトは茎から発根しやすいため「深植えすると根が増えて丈夫になる」と言われますが、これは実生苗の話です。接ぎ木苗で深植えは厳禁です。

台木のわき芽を取る

台木側から出る芽(台木芽)を放置すると、台木の葉が茂って栄養を奪い、穂木が育たなくなります。接ぎ木部より下から出る芽は、見つけ次第かき取ってください。

輪作は続ける

接ぎ木苗は輪作年限を短縮する免罪符ではありません。

接ぎ木苗を使いながら連作を続ければ、土壌中の菌密度は上がり続けます。いずれ抵抗性を超えて発病しますし、その頃には土の菌密度が非常に高くなっているため、回復に長い年数が必要になります。

接ぎ木苗+輪作の組み合わせで使うのが正しい運用です。

実生苗との使い分け

接ぎ木苗 実生苗
価格 高い(2〜3倍) 安い
土壌病害 強い 弱い
台木の影響が出る場合あり 品種本来の味
向く場面 同じ場所で作り続ける区画、過去に病害が出た畑、市民農園 新しい畑、輪作が十分に回せる区画、プランター(新しい土)

接ぎ木苗を選ぶべき場面

実生苗で十分な場面

費用対効果をどう考えるか

1株あたり200〜300円の差は、家庭菜園の規模なら数百円〜千円程度の違いです。

一方、青枯病で株が枯れれば収穫はゼロですし、その区画は数年ナス科が作れなくなります。リスクのある区画では接ぎ木苗の方が安い、というのが率直なところです。

逆に、輪作がしっかり回っていて病害歴のない畑なら、実生苗で問題ありません。

まとめ

科ごとの詳しい話はナス科の連作障害ウリ科の連作障害にまとめています。次に植える野菜は連作障害チェックツールで確認できます。

前に育てた野菜を選ぶだけで、次に植えてよい野菜がすぐ分かります。

連作障害チェックツールを使う